CRMを導入したのに、案件の情報が更新されない。結局、会議の前に担当者へ確認し、別のExcelにまとめ直している。
このようなときは、最近入力が止まった案件を一つ取り上げ、どの作業で困ったかを現場と確認してみてください。項目の多さだけでなく、更新のタイミング、必要な情報の不足、二重入力、操作環境などが関係している可能性があります。
最初に確認するのは、入力が止まった一件の操作と、情報の使い道・更新する時点・二重入力の有無です。項目削除やツールの買い替えを決める前に、何が作業を止めているかを整理します。
この記事では、顧客情報や対応履歴を管理するCRMを既に使っている会社に向けて、入力運用を見直す確認点と進め方を紹介します。
1.まず「入力してもらう目的」をそろえる
入力を増やしたい理由を、具体的な業務に置き換えます。
たとえば「案件を管理したい」よりも、「担当者が休んでも、事務担当が回答済みか確認できる」「見積もり後に返事を待っている案件を確認できる」とした方が、必要な情報が明確になります。
目的が複数あっても構いません。ただし、各項目を誰が何に使うかを説明できるようにします。管理者の集計に必要な情報も、入力する側と使い道を共有してください。
受付から担当者不在時の引継ぎまで整理したい場合は、問い合わせ・案件で共有する情報と運用の決め方も参考にしてください。
2.入力が止まる7つの確認点
| 確認点 | 現場で確かめること | 見直しの候補 |
|---|---|---|
| 項目の使い道 | 誰が、いつ、どの判断に使うか | 用途の説明、入力時期の変更、必須・任意の整理 |
| 入力時に情報がそろうか | まだ分からない項目で保存できなくなっていないか | 初回受付と後工程で必要な情報を分ける |
| 二重入力 | 日報・Excel・会議資料に同じ情報を写していないか | 元となる記録と報告方法を整理する |
| 更新するタイミング | 誰がどの出来事の後に更新するか分かるか | 見積もり送付時、担当変更時などのルールを決める |
| 操作する環境 | 現場の端末で探す・入力する・保存する操作ができるか | 表示順、画面、権限、端末や通信環境を確認する |
| 入力後の利用 | 入力した情報を担当者や管理者が使っているか | 引継ぎや案件確認の場で同じ記録を見る |
| 困ったときの対応 | 判断できない項目やエラーを誰に聞くか分かるか | 問い合わせ先と、ルールを変更する担当を決める |
この表は原因を断定する診断ではありません。実際の操作を見せてもらい、どこで迷ったか、どの作業に時間がかかったかを確かめるために使います。
3.項目は削除する前に、使われ方を確認する
項目数は少ないほどよいとは限りません。業務に必要な項目まで消すと、別の担当者が後から聞き直すことになります。
まず、現在の項目を「用途」「入力する人」「必要になる時点」で整理します。
| 項目の状態 | 見直し方 |
|---|---|
| 受付時に分かり、すぐに必要 | 受付時の入力候補にする |
| 後の工程で分かる | その工程の担当者と更新時期を決める |
| 別の記録から取得している | 取得元と確認方法を確かめ、重複を減らす方法を検討する |
| 用途が分からない | 他部署・帳票・連携処理で使っていないか確認する |
削除を検討する項目は、保存済みの情報や集計、連携に影響しないか確認します。必要に応じて、入力画面から外す、任意にする、段階的に廃止する方法も比較してください。
たとえば、初回問い合わせの時点では金額が分からないのに金額入力を必須にしていると、仮の値を入れる運用になるかもしれません。これは仮定例ですが、入力の有無だけでなく情報の確かさも考える必要があることを示しています。
4.Excelとの二重管理は、情報ごとに整理する
CRMを導入していても、Excelを使う仕事が残ること自体は問題ではありません。見直したいのは、同じ情報を複数の場所で別々に更新し、どちらが正しいか確認し続ける状態です。
顧客連絡先、案件の状態、売上見込みなど、情報ごとに元となる記録を決めます。CRMから取り出してExcelで分析する場合は、分析用のコピーなのか、更新結果を戻す運用なのかを区別します。
報告用の表をやめる際は、その表を受け取る人が必要としていた情報を、別の方法で確認できるか試してください。新旧を並行して使う期間が必要なら、終了条件も決めておきます。
5.入力した情報を、実際の仕事で使う
案件確認の場ではCRMの記録を見て、次の対応や引継ぎを話します。内容が古い場合は、誰がいつ更新するかを決め、会議用の別の表だけを直して終わらせないようにします。
現場の担当者にも、記録が役立つ場面を作ります。次の訪問前に前回の約束を確認する、同僚が代わりに回答するときに経緯を見られる、といった使い方です。
その際、不要な記録まで増やさず、閲覧範囲も業務上必要な範囲にします。入力を求める説明と、実際の使い方が一致しているかを確かめましょう。
6.一部で試し、入力の負担と情報の質を見る
対象の業務や担当者を絞り、項目とルールの変更を試します。試す期間は案件の動きに合わせ、受付・更新・引継ぎまで確認できるようにします。
確認する内容は、たとえば次の3つです。
- 入力や修正にかかる負担がどう変わったか。
- 引継ぎに必要な情報が、必要な時点でそろっているか。
- 記録が古いために聞き直す場面が減ったか。
入力率を使う場合は、何を分母と分子にするか決めます。「その週に記録すべき対応のうち、期限までに必要な内容を記録した割合」など、対象と期限を定めて比べます。ログインした人の割合と、対応記録がそろった割合は別の指標です。
件数の多い少ないだけで個人を評価せず、案件の種類や担当業務の違い、未入力の理由も確認します。
7.自動化や製品変更を検討するとき
入力する内容とタイミングが整理できたら、他の記録からの転記や通知を自動化できるか検討します。まずは何を自動化し、誰が結果を確認するかを決めてください。
AIによる文章の整理などを使う場合も、下書きの内容を確認し、誤った情報が確定記録として残らない運用を考えます。扱う情報、利用条件、権限、費用は候補ごとに確認が必要です。
運用の見直しだけでは、必要な機能や使いやすさを満たせない場合もあります。買い替えを検討する際は、満たせない条件を具体化し、移行する情報、教育、管理担当、契約終了時のデータの扱いまで比較します。
8.現場と管理側の間で、整理が進まないときは
管理者が必要とする情報と、現場が無理なく入力できる内容を、両者で確認することが出発点です。
「項目を減らすことに合意できない」「営業と事務で記録が分かれている」「設定を変えるとどこに影響するか分からない」。そのような場合は、業務の流れと情報の使い道を第三者と整理する方法もあります。
アカンパニー・パートナーズでは、IT担当者がいない中小企業の課題整理、運用ルールの検討、必要に応じた導入・定着を支援します。設定変更や構築などの実作業は、内容を確認したうえで対応範囲をご案内します。
CRMの入力・運用の困りごとを相談する|初回相談の内容を見る
初回相談は60分・無料です。現状と困りごとを伺い、次に確認することを整理します。詳細調査や設計が必要な場合は、別途範囲と費用をご案内します。
投稿者プロフィール

- 代表
-
プログラマーとしてキャリアをスタートし、製造業の社内SEとして「工場」の論理を、士業事務所の社内SEとして「先生」の論理を肌で学んできました。異なる文化を持つ組織の中でITを推進するには、技術力以上に「聴く力」と「翻訳力」が必要です。
現在はその経験を活かし、新潟の中小企業のDXを支援しています。
ITコーディネーター/上級ウェブ解析士/上級SNSマネージャー



