社内SEを採用 vs 外部ITコーディネーター活用|年間コストを試算すると差は600万円以上になる

社内SEを1名採用した場合の年間総コストは、給与・採用費・法定福利費を合わせると800〜1,000万円以上になります。一方、ITコーディネーターの月額顧問と情シスアウトソーシングを組み合わせると年間60〜360万円が目安です。この記事では、隠れたコストも含めた試算・採用すべきケース・外部に任せるべきケースの判断基準を解説します。
【ITコーディネーターとは】
経済産業省が推進する民間資格(ITコーディネーター協会が認定)の保有者で、特定のツールやベンダーに依存しない中立的な立場で、経営視点からIT活用を支援する専門家のことです。
社内SEを採用した場合の年間総コストはいくらか?
給与だけで計算してはいけない理由
中小企業の経営者が「IT担当者を採用しよう」と考えるとき、頭に浮かぶのは「年収400〜500万円くらいかな」という給与の数字だけのケースが多いです。しかし実際には、給与以外にも複数のコストが積み重なり、総コストは給与の1.5〜2倍に達することがあります。
採用を検討する前に、以下の6つのコスト項目を把握することが重要です。
社内SE採用の年間総コスト内訳(6項目)
社内SEの平均年収は510万円(中央値)です。これは求人ボックスが2026年1月に掲載求人情報から算出した給料情報に基づきます。ただしこれは給与のみです。実際の総コストは以下の内訳で積み上がります。
(出典:求人ボックス「社内SEの仕事の平均年収は510万円」https://xn--pckua2a7gp15o89zb.com/%E7%A4%BE%E5%86%85SE%E3%81%AE%E5%B9%B4%E5%8F%8E%E3%83%BB%E6%99%82%E7%B5%A6 2026年1月)
【採用コスト試算ボックス:社内SE1名採用の年間総コスト】
① 給与(年収):500万円(中途採用・中小企業向け目安) ② 法定福利費(社会保険・雇用保険の事業主負担):約75万円(給与の約15%) ③ 採用コスト(エージェント手数料):150〜175万円(理論年収の30〜35%) ④ 教育コスト・OJT:30〜50万円(社内教育・研修・ツール費) ⑤ PC・機器・開発環境整備:20〜30万円(初年度のみ) ⑥ 採用期間中の業務空白コスト:50〜100万円(採用確定まで平均3〜6ヶ月)
合計(初年度):825〜930万円 合計(2年目以降):600〜650万円/年(採用コスト・初期費用を除く)
採用エージェントを利用した場合の手数料は、一般的に内定者の理論年収の30〜35%が相場です。年収500万円の社内SEを採用する場合、エージェント手数料だけで150〜175万円が初年度にかかります。
さらに、中小企業では「採用したITエンジニアが何をできる人なのか」の評価が難しく、採用後に「期待と実態のミスマッチ」が起きやすいというリスクも存在します。
外部委託(ITコーディネーター活用)のコストはいくらか?
社内SE採用の代替手段として、外部専門家に委託する場合のコストを整理します。
ITコーディネーターの月額顧問の費用目安
ITコーディネーターとは、経済産業省が推進する民間資格(ITコーディネーター協会が認定)の保有者で、特定のツールやベンダーに依存しない中立的な立場で、経営視点からIT活用を支援する専門家です。
月額顧問契約の費用目安は月額3〜30万円で、中小企業向けでは月額5〜10万円が中心です。年間に換算すると60〜120万円が目安です。スポット相談から始めて月額顧問に移行するケースが多く、最初から大きな費用は不要です。
情シスアウトソーシングの費用目安
情シスアウトソーシングとは、ヘルプデスク・PC管理・キッティングなどの日常IT運用業務を外部会社に委託するサービスです。月額18万円〜(年間216万円〜)が相場で、対応範囲によって費用が変わります。(出典:情シス365「情シスアウトソーシング完全解説」https://www.josis365.com/blog/joshisu-outsourcing-chusho-kigyou/ 2026年5月更新)
補助金を使った場合の実質負担
新潟県の場合、NICO(にいがた産業創造機構)の専門家派遣事業を活用することで、ITコーディネーターへの依頼費用の1/2〜2/3が補助されます。小規模企業枠では1回あたりの実質負担が15,000円程度から利用できます。詳細は「ITコーディネーターの費用・料金相場」をご参照ください。
【外注コスト試算ボックス:外部委託の年間コスト目安】
パターンA:ITCスポット相談のみ(月1〜2回) 時間単価8,000円×月3時間×12ヶ月 = 約29万円/年
パターンB:ITCの月額顧問(月5万円) 5万円×12ヶ月 = 60万円/年
パターンC:ITC月額顧問(5万円)+情シスアウトソーシング(18万円) (5万円+18万円)×12ヶ月 = 276万円/年
採用 vs 外部委託の年間コスト試算比較
採用コストと外部委託コストを同じ条件で比較すると、差は一目瞭然です。
ケース別の年間コスト比較
| 選択肢 | 初年度コスト | 2年目以降 | 主な対応業務 |
|---|---|---|---|
| 社内SE採用(年収500万円) | 825〜930万円 | 600〜650万円/年 | IT戦略・開発・ヘルプデスク・全般 |
| ITC月額顧問のみ(月5万円) | 60万円/年 | 60万円/年 | IT戦略・DX推進・ベンダー管理 |
| ITC顧問+情シスアウトソーシング | 276万円/年 | 276万円/年 | IT戦略+日常運用・ヘルプデスク |
| 社内SE採用+ITC顧問(月3万円) | 900万円以上 | 636万円/年 | 全業務カバー・最も手厚い体制 |
社内SEを採用した場合と「ITC顧問+情シスアウトソーシング」を組み合わせた場合を比較すると、初年度で約600〜650万円の差が生じます。2年目以降でも年間330〜370万円の差が続きます。
社内SE採用と外部委託(ITC顧問+情シスアウトソーシング)の最大の違いは、初年度コストの差にあります。社内SE採用は825〜930万円かかるのに対し、外部委託の組み合わせは276万円で済み、初年度だけで約600万円以上の差が生じます。
採用コストには含まれない「隠れたコスト」
採用 vs 外注を比較する際に見落とされがちな「隠れたコスト」が3つあります。
① 教育・育成にかかる時間コスト 採用した社内SEが自社の業務を把握し、戦力になるまでには3〜6ヶ月かかります。その間、他の社員が教育に時間を取られるコストが発生します。
② 退職リスクと再採用コスト 社内SEが退職すると、再採用コスト(150〜175万円)と採用期間中の業務停止リスクが再び発生します。「ひとり情シス」体制では、この退職リスクが常に存在します。
③ 採用期間中の業務空白 中途採用は内定まで平均3〜6ヶ月かかります。その間、IT業務が滞るコストと機会損失は試算に含まれないことがほとんどです。
採用すべきケース・外部に任せるべきケース
コストだけで判断するのではなく、自社の状況・事業規模・IT活用のフェーズに応じて判断することが重要です。
社内SEを採用すべき企業の特徴(3条件)
以下の3条件が揃う場合は、社内SE採用を検討する価値があります。
① 従業員100名以上で、IT業務量が常時フルタイムを必要とする規模 社内のIT問い合わせ・障害対応・システム管理が毎日発生し、外部委託では対応が追いつかない規模感です。
② 独自システム・基幹システムの内製開発が必要な場合 業種特有のシステム開発・カスタマイズが継続的に発生し、外部ベンダーへの依存を減らしたいケースです。
③ IT戦略を社内で主導したい・DXを経営の中核に据える場合 IT人材を「経営チームの一員」として育成したい場合は、採用が長期的に合理的な投資になります。
外部ITコーディネーターを活用すべき企業の特徴(3条件)
以下の3条件に当てはまる場合は、外部委託が現実的な選択肢です。
① 従業員50名以下・IT業務が週10〜20時間程度の規模 フルタイムの社内SEを抱えるほどのIT業務量がなく、スポット対応や月次の定例相談で十分な規模です。
② IT専門人材の採用が難しい地域・規模の企業 都市部から離れた地域や中小規模の企業では、即戦力のIT人材採用が非常に困難な場合があります。
③ まずITの方向性を整理したい・DXの入り口にいる段階 「何から始めればよいかわからない」段階では、採用より先にITコーディネーターへの相談でIT戦略を整理することが費用対効果の高い選択です。
セルフ判断チェックリスト(7項目)
| チェック項目 | 採用向き | 外注向き |
|---|---|---|
| 従業員規模100名以上か | ✅ | |
| 毎日IT問い合わせが10件以上あるか | ✅ | |
| 独自システム・基幹開発が必要か | ✅ | |
| IT担当を採用できる予算800〜1,000万円/年があるか | ✅ | |
| 即戦力IT人材を採用できる市場環境にあるか | ✅ (困難なら外注) | |
| IT業務が週10〜20時間程度に収まるか | ✅ | |
| まずIT戦略・方向性を固めたい段階か | ✅ |
自社にどちらが合うか迷っている方は、まず初回無料相談でご確認ください
新潟を拠点に、オンラインで全国対応しています。初回相談無料です。
中小企業がIT担当者採用で失敗しやすい3つの落とし穴
① 採用後に「期待と違った」になりやすい
中小企業でのIT担当者採用では、「ヘルプデスクもできてシステム開発もできてDX推進もできる人」を期待するケースが多いです。しかし実際には、ヘルプデスク得意な人・開発得意な人・IT戦略得意な人はそれぞれ異なるスキルセットを持ちます。採用後のミスマッチが「こんなはずではなかった」につながりやすいです。
② 退職リスクが常に存在する(ひとり情シスの構造問題)
社内SE1名体制では、その人が退職した瞬間にIT業務全体が止まるリスクが常に存在します。採用で解決したはずの問題が再発するこの構造は、「ひとり情シス問題」として多くの中小企業が直面しています。詳細は「ひとり情シス中小企業の課題と解決策」をご参照ください。
③ IT人材市場で中小企業は競争劣位
経済産業省の調査(2019年発行「IT人材需給に関する調査」)によると、IT人材は2030年に最大約80万人不足するという試算が示されています。この数値は2026年現在も業界標準の参照値として広く引用されています。採用市場では大企業・メガベンチャーが優秀なIT人材を集中的に確保しており、給与水準・キャリアパスで劣る中小企業は採用競争で不利な状況が続いています。(出典:経済産業省「IT人材需給に関する調査」https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/houkokusyo.pdf 2019年発行)
外部ITコーディネーターに任せられる業務の範囲
外部委託で対応できる業務の範囲を整理すると、社内SE採用との役割分担がより明確になります。
業務範囲の比較
| 業務カテゴリ | 社内SE採用 | ITCの月額顧問 | 情シスアウトソーシング |
|---|---|---|---|
| IT戦略・DX計画立案 | ◎ | ◎ | △ |
| ベンダー選定・コントロール | ◎ | ◎ | △ |
| 補助金申請サポート | ○ | ◎ | × |
| ヘルプデスク・PC対応 | ◎ | △ | ◎ |
| システム開発・実装 | ◎ | △ | × |
| セキュリティ対策 | ◎ | ○ | ○ |
| IT資産管理 | ◎ | △ | ◎ |
ITコーディネーターが最も得意とするのは「IT戦略・DX計画・ベンダー管理・補助金申請サポート」です。一方、ヘルプデスクや日常IT運用は情シスアウトソーシングの得意領域です。
社内SEとITCを組み合わせることで、社内SEが日常運用・開発に集中し、ITCが戦略・ベンダー管理を担う分業体制も有効です。要件定義の外注については「要件定義だけ外注できる?中小企業の部分依頼ガイド」もご参照ください。
【実務コメント】
私自身、SIer(受注側SE)・製造業の社内SE・弁護士法人のひとり情シス的担当という3つの立場を経験しました。社内SEとして働いていた時期、1人で全IT業務を担うことの限界を強く感じました。戦略を考える時間が取れず、日常対応に追われる状態が続くと、本来やるべき「攻めのIT活用」が後回しになります。現在はITコーディネーターとして外部支援する立場ですが、「採用より先にITCに相談する」という選択が、特に中小企業では費用対効果が高いと実感しています。
ITのコスト最適化・外部活用の方法について相談したい方は、まずお気軽にご相談ください。
新潟を拠点に、オンラインで全国対応しています。初回相談無料です。
よくある質問
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社内SEを採用する場合の年間総コストはどのくらいですか?
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初年度は825〜930万円が目安です。給与500万円に加え、法定福利費・採用コスト・教育費が積み重なります。詳細は本文「コスト試算ボックス」をご参照ください。
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ITコーディネーターは社内SE代わりになりますか?
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IT戦略・DX推進・ベンダー管理は代替できますが、システム開発・ヘルプデスクは情シスアウトソーシングとの組み合わせが必要です。本文「業務範囲の比較」をご参照ください。
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採用とITC活用を組み合わせることはできますか?
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可能です。社内SEが日常運用・開発を担い、ITCがIT戦略・ベンダー管理を担う分業体制が、規模が大きくなってきた中小企業に適した形態です。
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中小企業でIT人材を採用するのは難しいですか?
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経産省の試算では2030年にIT人材が最大80万人不足する見通しです。大企業との競争で中小企業は不利な状況が続いており、採用難易度は高いです。
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まず何から検討すればよいですか?
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自社のIT業務量を棚卸しし、「週何時間のIT業務があるか」を数値化することが第一歩です。フルタイムが不要な規模であれば外部委託から始めることを推奨します。
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新潟でIT体制の相談ができる窓口はどこですか?
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NICO・よろず支援拠点・アカンパニー・パートナーズ(初回無料)が対応しています。詳細は「新潟中小企業のDX・IT相談ガイド」をご参照ください。
参考:求人ボックス「社内SEの仕事の平均年収は510万円」https://xn--pckua2a7gp15o89zb.com/%E7%A4%BE%E5%86%85SE%E3%81%AE%E5%B9%B4%E5%8F%8E%E3%83%BB%E6%99%82%E7%B5%A6(2026年1月)/ 情シス365「情シスアウトソーシング完全解説」https://www.josis365.com/blog/joshisu-outsourcing-chusho-kigyou/(2026年5月更新)/ 経済産業省「IT人材育成の状況等について」https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/houkokusyo.pdf
投稿者プロフィール

- 代表
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プログラマーとしてキャリアをスタートし、製造業の社内SEとして「工場」の論理を、士業事務所の社内SEとして「先生」の論理を肌で学んできました。異なる文化を持つ組織の中でITを推進するには、技術力以上に「聴く力」と「翻訳力」が必要です。
現在はその経験を活かし、新潟の中小企業のDXを支援しています。
ITコーディネーター/上級ウェブ解析士/上級SNSマネージャー






