ひとり情シスの限界と5大リスク|中小企業が取るべき3つの解決策を費用比較で解説

ひとり情シスとは、ITシステムの管理・運用・ヘルプデスクをたった1人で担う体制のことです。中堅・中小企業の24.5%がこの状態にあり(ノークリサーチ・2025年調査)、担当者の退職・突然の不在で業務が丸ごと止まるリスクをはらんでいます。この記事では、ひとり情シスが抱える5大リスク・正社員採用 vs 外部委託 vs ITコーディネーター活用の費用比較・今すぐできる4ステップの解消法を解説します。
ひとり情シス・ゼロ情シスとは?中小企業でなぜ増えているのか
ひとり情シスの定義とゼロ情シスとの違い
ひとり情シスとは、IT管理・運用・ヘルプデスクをたった1人で担う体制のこと。中堅・中小企業の24.5%がこの状態に該当し、2023年から3.2ポイント上昇している。(出典:ノークリサーチ・2025年5月調査)
ゼロ情シスとは、IT専任担当者が存在しない体制のこと。総務・経理などが兼任しているケースが多く、中堅企業の約18.8%がこの状態に該当する。(出典:Dell EMC IT投資動向調査)
ひとり情シスとゼロ情シスの最大の違いは、「一応IT担当者と呼べる人がいるか否か」にあります。ひとり情シスは担当者がいる分だけゼロ情シスよりマシに見えますが、その担当者が辞めた瞬間にゼロ情シスへ転落するリスクがあります。実態として、両者は同じ「IT体制が脆弱な状態」です。
ひとり情シスが増加する3つの構造的背景
中小企業でひとり情シスが増加する背景には、構造的な要因が3つあります。
① IT人材の採用競争で中小企業が不利
経済産業省の試算によると、IT人材は2030年に最大約80万人不足すると予測されています。採用市場では大企業・メガベンチャーに優秀なIT人材が集中し、給与水準・キャリアパスで劣る中小企業は人材確保が困難な状況が続いています。
② 「情シスはコスト部門」という経営層の認識
IT部門は直接的な売上に貢献しないと見なされやすく、人員増加の投資優先度が低くなりがちです。現担当者が退職しても「1人でなんとかなっているから増やさなくてもよい」という判断が繰り返される結果、ひとり体制が固定化します。
③ DX推進で業務量が急増
以前はPCの管理・ネットワーク運用程度だった情シス業務が、クラウド移行・AI活用・セキュリティ対策・テレワーク環境整備・DX推進まで急拡大しています。業務量が増える一方で人員は増えず、1人の担当者に過大な負荷がかかる構造になっています。
ひとり情シスが抱える5大リスク
ひとり情シス体制は、企業に5つの重大なリスクをもたらします。以下がその全体像です。
【5大リスク・まとめ】
① 担当者の退職・突然不在による業務停止リスク
② セキュリティ対策の抜け漏れリスク
③ 属人化による引き継ぎ不能リスク
④ 戦略業務に手が回らない「守りのみ」状態
⑤ 経営層の無理解による業務過多・燃え尽きリスク
① 担当者の退職・突然不在による業務停止リスク
ひとり情シスが病気・事故・退職などで突然不在になると、社内のITトラブル対応・ネットワーク管理・システム運用がすべて止まります。特にシステム構成・運用手順・パスワード管理などが文書化されていない場合、代替要員への引き継ぎが極めて困難です。「担当者しか知らない情報」が業務継続の命綱になっている状態は、企業のBCP(事業継続計画)上、最大のリスクです。
② セキュリティ対策の抜け漏れリスク
ひとり情シスの環境では、セキュリティ対策を複数の目でチェックする仕組みがありません。設定ミスや対策漏れが発生しても気づきにくく、ランサムウェア・標的型攻撃・情報漏洩インシデントに対して脆弱な状態が続きます。IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン第3.1版」でも、自社単独でのセキュリティ運用が困難な中小企業には外部専門家の活用が明確に推奨されています。
③ 属人化による引き継ぎ不能リスク
ひとり情シスは、システムの全体像・設定内容・ベンダー連絡先・契約内容などを1人で管理しています。そのため、担当者の頭の中にしか情報がない「ブラックボックス状態」になりやすいです。新しい担当者が採用できても、引き継ぎに数ヶ月以上かかるケースがあり、その間の機会損失は計り知れません。
④ 戦略業務に手が回らない「守りのみ」状態
1人でヘルプデスク対応・PC設定・ネットワーク管理・セキュリティ対応をこなすと、本来注力すべきDX推進・IT戦略立案・業務改善に時間が割けません。JUAS(一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会)「企業IT動向調査」によると、従業員50名以上の企業のIT運用業務は月間平均100時間を超えます。日々の「守り」業務だけで時間が埋まり、会社の成長に貢献する「攻め」のIT活用が後回しになり続けます。
⑤ 経営層の無理解による業務過多・燃え尽きリスク
「ITの担当者がいるから大丈夫」という経営層の認識が、担当者への過大な業務集中を招きます。ひとりで全IT業務をこなすことへの限界を訴えにくい環境が生まれ、担当者が疲弊・燃え尽き・退職するサイクルに陥りやすいです。担当者の退職はそのままリスク①(業務停止)に直結します。
ひとり情シスの業務範囲とは?1人が担う仕事の全体像
ひとり情シスが日々こなしている業務は、大きく3つのカテゴリに分類できます。
【日常運用業務】
- PCのセットアップ・キッティング・廃棄
- ネットワーク・Wi-Fi・プリンターの管理
- 社内ヘルプデスク対応(トラブル対応・問い合わせ)
- IT資産(PC・スマホ・ライセンス)の管理
【IT戦略・DX推進・ベンダー管理】
- システム選定・ベンダーコントロール・契約管理
- クラウドサービス(Microsoft 365・Google Workspace等)の運用
- DX推進計画の立案・実行
- IT導入補助金などの補助金申請サポート
【セキュリティ・コンプライアンス対応】
- ウイルス対策・EDR(端末検知)ツールの管理
- セキュリティインシデント対応
- 個人情報保護・社内ポリシー整備
- バックアップ・BCP対応
これらすべてを1人でこなすことは、構造的に無理があります。業務の棚卸しをして「外部に任せられるもの」を切り出すことが、ひとり情シス問題解消の第一歩です。
解決策の比較|正社員採用 vs 外部委託 vs ITコーディネーター活用
ひとり情シス問題を解消するための選択肢は主に3つあります。費用・対応範囲・スピードで比較します。
| 比較項目 | 正社員採用 | 情シスアウトソーシング | ITコーディネーター活用 |
|---|---|---|---|
| 年間費用(目安) | 650〜900万円 | 216万円〜(月18万円〜) | 36〜360万円(月3〜30万円) |
| 対応開始までの期間 | 3〜6ヶ月(採用〜入社) | 1〜2ヶ月 | 最短2週間〜 |
| 対応範囲 | 幅広く対応可 | 定型業務中心(ヘルプデスク・運用) | IT戦略・DX・ベンダー管理中心 |
| ベンダー中立性 | △(関係性による) | △(契約ベンダー優先になりがち) | ◎(中立が原則) |
| 補助金の活用 | 対象外 | 対象外が多い | 専門家派遣事業の対象になる場合あり |
| 担当者不在リスク | 再び発生する可能性あり | チーム対応で低減 | 複数チャネルで対応可 |
(費用出典:情シス365「情シスアウトソーシング完全解説」https://www.josis365.com/blog/joshisu-outsourcing-chusho-kigyou/ 2026年5月最新版)
正社員採用とアウトソーシングの最大の違いは費用と即応性にあります。正社員採用は年間650〜900万円・採用まで3〜6ヶ月かかるのに対し、アウトソーシングは年間216万円〜・1〜2ヶ月で開始できます。IT戦略・ベンダー選定など「攻め」の業務はITコーディネーターが最も適しています。
3択の使い分けのポイント:定型業務(ヘルプデスク・PC管理)の負荷を下げたいなら外部委託が即効性が高いです。IT戦略・ベンダー選定・DX推進など「攻め」の業務を強化したいならITコーディネーター活用が適しています。両者を組み合わせることで、ひとり情シスの業務を大幅に軽減できます。
ITコーディネーターの費用相場の詳細は「ITコーディネーターの費用・料金相場」をご参照ください。
ひとり情シス問題を解消するための4ステップ
ひとり情シス問題は、一度に全部解決しようとせず、以下の4ステップで段階的に対処することが現実的です。
STEP 1:現在の業務を棚卸しして可視化する
まず、情シス担当者が日々行っている業務をすべてリストアップします。「ヘルプデスク対応に週何時間かけているか」「ベンダー管理に何社関わっているか」を数値で把握することが出発点です。経営層に業務量を見える化することで、支援を引き出しやすくなります。
STEP 2:外部委託できる定型業務を切り出す
次に、棚卸しした業務のうち「外部に委託できる定型業務」を特定します。PCキッティング・ヘルプデスク一次対応・IT資産管理は外部委託向きの代表例です。定型業務を委託することで、担当者はより付加価値の高い業務に集中できます。
STEP 3:ITコーディネーターにIT戦略・ベンダー管理を依頼する
IT戦略立案・ベンダーコントロール・DX推進計画は、外部の専門家に任せるのが効率的です。ITコーディネーター(経済産業省が推進する民間資格・ITコーディネーター協会認定)とは、特定のベンダーに依存しない中立的な立場で経営視点からIT活用を支援する専門家です。社内のひとり情シスでは手が届かない「攻め」のIT業務をカバーできます。
STEP 4:IT管理ドキュメントを整備して属人化を解消する
最後に、システム構成図・パスワード管理・ベンダー連絡先・契約一覧などのドキュメントを整備します。「担当者がいなくてもわかる状態」を作ることで、リスク①(業務停止)とリスク③(引き継ぎ不能)を同時に解消できます。
【実務コメント】
士業法人のシステム担当として、基幹システム改善・社内ヘルプデスク・IT運用保守・AI活用ツール導入・Web集客まで、事実上ひとり情シス的な業務を担ってきました。経験上、最初にやるべきことは「業務の棚卸し」と「経営層への可視化」です。「こんなに多岐にわたる業務を1人でやっている」と数値で示すことで、初めて外部支援の予算が動き始めます。全部1人で抱え込もうとせず、定型業務は外部に、戦略業務は専門家と一緒にやる体制を作ることが、持続可能なIT運用の鍵です。
ITコーディネーターに依頼するとひとり情シス問題がどう変わるか
ベンダーコントロール・IT戦略を外部に移管できる
ひとり情シスが最も疲弊する業務のひとつが、ベンダー対応です。複数のシステムベンダー・クラウドサービス・通信会社との交渉・契約管理を1人でこなすのは、専門知識と時間の両方が必要です。ITコーディネーターに依頼することで、ベンダーコントロール・要件整理・契約確認を代行してもらえます。
| 比較項目 | ひとり情シス単独 | ITコーディネーター活用後 |
|---|---|---|
| ベンダー対応 | 担当者が全社分を1人で対応 | 専門家が中立的に整理・交渉を支援 |
| IT戦略立案 | 日常業務に追われて手付かず | 外部視点で計画化・実行支援 |
| DX推進 | 「やりたいがリソースがない」 | 補助金活用含めたロードマップを設計 |
| 属人化リスク | 高い(担当者依存) | 低減(ドキュメント整備を並走支援) |
補助金申請・DX計画策定も一括サポートが可能
ITコーディネーターは、IT導入補助金・NICO専門家派遣事業などの補助金申請サポートにも対応できます。ひとり情シスが補助金申請まで対応するのは現実的に困難ですが、外部専門家と連携することで補助金を活用したコスト削減が可能になります。
ベンダー選定でのITコーディネーター活用の詳細は「中小企業がベンダー選定で失敗する原因とチェックリスト」もご参照ください。
ひとり情シスの負担を減らし、IT体制を強化したい方は、まずお気軽にご相談ください。
新潟を拠点に、オンラインで全国対応しています。初回相談無料です。
よくある質問
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ひとり情シスとゼロ情シスは何が違いますか?
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ひとり情シスはIT専任担当者が1人いる状態、ゼロ情シスは専任者が存在しない状態です。どちらもIT体制が脆弱という点では同じリスクを抱えています。
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ひとり情シスが退職したらどうなりますか?
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システム構成・設定情報・ベンダー連絡先が引き継がれず、業務が停止するリスクがあります。事前にドキュメント整備と外部支援体制の構築が不可欠です。詳細は本文「5大リスク①」をご覧ください。
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情シスのアウトソーシングにはどのくらいの費用がかかりますか?
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月額18万円〜(年間216万円〜)が目安です。正社員採用(年間650〜900万円)と比べて大幅にコストを抑えられます。ITコーディネーター活用は月額3〜30万円が目安です。
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ITコーディネーターと情シスアウトソーシングは何が違いますか?
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アウトソーシングは定型業務代行が中心、ITコーディネーターはIT戦略・DX・ベンダー選定など経営視点の支援が中心です。両者の組み合わせが最も効果的です。
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ひとり情シス問題は補助金で解決できますか?
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IT導入補助金(経済産業省)やNICO専門家派遣事業を活用できるケースがあります。詳細は「IT導入補助金×AIツール活用ガイド」をご参照ください。
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まず何から始めればいいですか?
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業務の棚卸しと可視化」が最初のステップです。担当者が週に何時間どの業務に使っているかを数値化し、経営層に共有することで、外部支援の予算確保につながります。詳細は本文「4ステップ」をご参照ください。
参考:ノークリサーチ「中堅・中小企業の情シス実態調査」IT Leaders(2025年10月)https://it.impress.co.jp/articles/-/28482 / IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン第3.1版」https://www.ipa.go.jp/security/guide/sme/ug65p90000019cbk-att/000055520.pdf / 情シス365「情シスアウトソーシング完全解説」https://www.josis365.com/blog/joshisu-outsourcing-chusho-kigyou/(2026年5月)
投稿者プロフィール

- 代表
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プログラマーとしてキャリアをスタートし、製造業の社内SEとして「工場」の論理を、士業事務所の社内SEとして「先生」の論理を肌で学んできました。異なる文化を持つ組織の中でITを推進するには、技術力以上に「聴く力」と「翻訳力」が必要です。
現在はその経験を活かし、新潟の中小企業のDXを支援しています。
ITコーディネーター/上級ウェブ解析士/上級SNSマネージャー






